Daily Information 1980s Archives

Daily Information for people born in the 1980s. *ほぼ Daily。1970-80年世代に向けたアラフォー談義*

【解決しない力】n-buna x suis. ヨルシカを聞く夜には "Negative Capability" が必要だ。「花人局」を聞いた夜。

「解決しない力」が必要となる時がある。

 

 

最近のお気に入り、ヨルシカ

ヨルシカ。作曲/編曲の n-buna 氏と、ボーカルの suis 氏により2017年に結成されました。
n-buna 氏による、情景が思い浮かぶ叙景的でありつつ叙情的歌詞とメロディ。まるで一曲が一つの映画作品のような、琴線に触れ続けるような楽曲が魅力的です。YouTube 動画でこれまでの作品のミュージックビデオが公開されています。歌詞・メロディ・歌声に加え、映像も加わり完璧な世界観が展開されています。

唯一の Live 映像「花人局 / 春泥棒」

YouTube, ヨルシカ Live 「花人局 / 春泥棒」。2022年4月段階で唯一の Live 映像です。水族館で収録された映像で、幻想的な映像美。生収録ならではのリズムの揺らぎやパート間の呼吸が絶妙なライブ感を醸し出し、非常に魅力的な作品です。
この前半パート「花人局 (はなもたせ)」、オリジナルのミュージックビデオは公開されていませんが、知らず知らずに引き込まれる魅力があります。

www.youtube.com

伴奏・バンド演奏・バイオリンなどの弦楽器、全てが重厚な演奏を行いつつ、それにパワー負けしない suis 氏の声が、絡みあいます。

 

何十回とリピートする中で

仕事中、パソコン作業中に、ヨルシカの楽曲を聞いています。耳に入るメロディ・声質、全てがお気に入りで、無限リピート状態となっていました。
ただ先日、「歌詞が気になる」と思ったのです。
それまでは、ただただ耳に入る楽曲を楽しんでいたのですが、時折頭に残るフレーズが気になるようになっていきました。

「洗面所の歯ブラシ、誰かのコップ、棚の化粧水、覚えのない物ばかりだ」

どのようなストーリーなのか、気になってしまいました。

 

Google 検索で

「花人局 歌詞」Google で検索すれば、数秒後に結果がわかりました。歌詞や考察もすぐに出てきて、理解することができました。ただ、そこで僕が感じたのは、「知らなくて良かったな」という感情でした。
それは決して、出てきた歌詞の意味やストーリーに失望したわけではありません。ただ、「知らないままの方が純粋に音楽を楽しんでいた」という事実に気づいてしまったのです。

ヨルシカ、歌詞を知らないままで良かった

ヨルシカの音楽の魅力。メロディ・伴奏・歌詞・歌声全てが同じ重力で絡み合い、絶妙なバランスを保っています。その中で、文字として歌詞を目にすることで、均衡が破れ、楽曲の意味が固定し収束してしまうような気がしたのです。
めまいのようなそんな感覚を覚えた後、すぐにそういった検索はやめ、音楽に戻り、魅力は復活しました。
 歌詞を知らない方が良かった。
 歌詞を知らないまま、楽曲をそのまま受け入れるのが良かった。
そう理解しました。

 

"Negative Capability" が心を救う

ネガティブ・ケイパビリティ "Negative Capability"
直訳はネガティブの能力。ネガティブさを、受け入れ、それに耐える、持ちこたえる力のことをいいます。イギリスの詩人ジョン・キーツの造語。事実や理由を早急に求めず、不確実さや不可解さ、疑惑のある状態にとどまる能力です。
正解を導き出す問題解決能力 = ポジティブ・ケイパビリティ "Positive Capability" に対立する能力です。

現代の利便性・効率追求が至上とされる中、社会活動においては、問題解決・意思決定が優先されますし、それが正義とされます。
ただ、発生する全ての問題に対して、適切な答えが出せないことも多いのです。その状況で、不確かさを理解し、その状況に耐えてその不可思議さの中に身を留める能力。そのような視点があります。

 

唯一の正解を選ぶのではなく、向き合うことを優先する。
それが、社会活動でなく余暇であれば、なおさら。
Negative Capability。
そのまま留まることも、一つの力です。

 

知ることを追い求めず、知らないままの不確実さの中に身を置いておく。
そんな形もあります。

 

ヨルシカ 「花人局」の歌詞の中に

同じ曲の中に、こんなフレーズがありました。

 

わからないままでも まぁ それはそれでもきれいだ

 

わからないままでもいい むしろ その方がいい

 

浮雲つかむような 花人局

 

まさにその通りのことが、同じ曲の中に示されていたのでした。