- 持ち回り業務が組織の効率を悪くする
- 私の職場での事案
- 「正解のない業務」が苦手だった
- 組織が望んだ役割が果たされていない
- 持ち回り・兼任業務の問題点
- 冒頭の A 氏が置かれた環境
- 打開策は何か
- 期間を区切って成果を評価する
- 兼任であっても、対価・報酬を与える
- この話、仕事の話? 政治の話?
持ち回り業務が組織の効率を悪くする
長く職場にいると、持ち回りの役職が回ってくることがあります。
「~~担当」、「~~対策委員」、「~~係」
慣習的に1~2年の任期で、現時点での業務とともに兼任で持ちまわるような役職で、学期ごとに換わる、生き物係、図書係、のようなものです。ある程度の規模の組織になると、このような役割が出てきます。
このシステムは、うまく機能すれば、交代で個々人の経験を積むことができるというメリットがあり、組織の基礎体力をつけることができます。ただ、実際には、弊害も多いように思われます。
私の職場での事案
これは、私の職場での事例です。私の部署の上司 (40歳代後半)。目の前の仕事は早くさばく、現場型の上司です。この上司、A 氏としましょう。A 氏 が、上層部の管理部門としての、持ち回りの役職の長となりました。複数の部署にまたがる、品質管理のような役職です。
現場での能力が高いために、A 氏には周辺も期待し、A 氏に任せれば大丈夫、との雰囲気になりました。ただ、これが間違いだったのです。A 氏は目の前の仕事をさばくのは速くとも、複数部署から出てきたデータを確認する、あるいは複数部署との調整をつける、などの業務を非常に苦手としていたのです。さらなる問題は、そのような業務が向いていないことを、本人自身が認識できていないことでした。
「正解のない業務」が苦手だった
複数の部署との調整、問題の認識、現実的な妥協点を見出す、フィードバックし、検証する。いずれも、抽象的な業務であり、「正解」がありません。
A 氏は、「正解のある業務」については、非常に速かったものの、それは、「彼なりの正解を決めて、独断・即決」していたからでした。今回の役職は、「正解のない中で、妥協点を見出し、調整・フィードバックし続ける」という業務だったのです。
結果、彼のその役職のもとに「議事録に乗って美しい、形式上の運用」が決定されていくものの、実際にそれがどうやってうまく機能していくか、5W1H が曖昧なままでした。実際の運用が曖昧なままであり、フィードバック機構も破綻しているため、トラブルが起こったとしても、その報告止まり。「トラブルを抽出して、再発を防ぐ」ということに至らなくなっていました。
結果、「トラブルが起きた部署の業務の質の問題」とのことで、その部署に対する介入を行わない状態となっていました。
組織が望んだ役割が果たされていない
組織としては、このようなトラブル対応、フィードバック、再発予防のための対策を、A 氏に対して求めていたはずです。ただ実際には A 氏は与えられた役割を全うしていませんでした。
これは、もちろん A 氏本人の資質の問題もあります。
ただ、やはり本質的には、持ち回り・兼任の業務、というシステムに大きな問題があるように思います。どのような問題でしょうか。
持ち回り・兼任業務の問題点
持ち回り・兼任の業務は性質上、「一定の期間担当すれば、次の担当に引き継ぐ」役職となります。
持ち回り業務の問題点は、そもそも、「なぜその役職が存在するのか、あるいは現在の問題点が何か」がはっきりしないことがあります。役職が割り振られた段階では、解決すべき問題点が明確化されておらず、業務の引継ぎが重要となります。前任者からの交代時に、ひとまずその場をしのぐ方法のみが示され、問題点が明確になりません。
そういった役職を与えられた際に、予想以上の成果を上げ、周囲を驚かせる人もいますが、そのような優秀な人間は稀です。
冒頭の A 氏が置かれた環境
冒頭の A 氏は、どのような状況だったのでしょうか。
A 氏: 「自分なりの正答を出し、満足していた」
参加者: 「責任者が出した回答であるし、大きな間違いは無い。会議で承認されたものだし、自分個人は、指示が出たら動こう」
~トラブル発生~
A 氏: 「自分は正答を出していた。それを守らなかった部署の能力の低さが原因だ」
参加者: 「何が問題だったのだろうか。とりあえず現場のヒアリングを行って、会議への資料を作っておこう。その後は、責任者 A 氏の指示をまとう」
...このような流れになっていました。
組織の質を管理すべきポジションにつく際に、A 氏・参加者のいずれもが、質を改善するためのフィードバックを回転させる視点に立たず、「答えを出す」までの単発になってしまっていたのが問題の様でした。
それぞれが、会議のための単発の答えを出す「線の意識」になっており、、「回転させる意識」が欠けていたようです。
打開策は何か
この A 氏が担当した役職は、結局のところ、トラブル再発を防ぐことはできませんでした。
どのようにすれば良かったか。
それは、「問題点・目標を明確化することから始める」ことだったのであると思います。
今回の例で言えば、「トラブル再発を無くす」ことを最優先事項として、「そのための手法」を次に位置づけることが必要でした。
そうすることで、
①<問題点の列記>→<できる対策の列記>→<組織の自己満足> ではなく、
②<最終目標の共有>→<できる対策の列記>→<問題点発生後のフィードバック>にできたのでしょう。
同じように見えますが、① は左から→への線ですが、② はフィードバックで常に最終目標に立ち返ることができます。
以前から言われている PDCA サイクルに加え、ロジックモデルの概念で捉えることができると思います。
単発の目標を中心とした、「短期間のワーキンググループ」も良いと考えます。
期間を区切って成果を評価する
エンドポイントの設定、期間の設定は非常に重要です。決められた期日内での業績や決定事項を評価する仕組みが必要でしょう。
兼任であっても、対価・報酬を与える
兼任業務でも、対価・報酬を与える必要があります。
通常の人間であれば、報酬が発生すれば、やる気がわきますし、多少の労力も精神的にもペイすることができます。
*逆に、対価を当然として業績を上げる意欲の無い人もいるでしょうが、そのような人は役職につけてはいけませんし、上層部の任命責任になると思います。
この話、仕事の話? 政治の話?
今回、私の身近な上司、A 氏をもとに、記載しました。
ただ、この話、政治の世界でもあるのでは ?
「~~大臣」って、このトラップにはまりやすい役職では?
「~~大臣」って...?
「~~大臣」...?
そんな目で政治や色々な業種を見てみると、面白いですね。